委嘱:芬の集(長谷由香・細川喬弘・清原晏)
初演:2024年10月13日(王子ホール、東京)
今回新しい箏合奏曲を、ということでいただいた委嘱は、「サウナをテーマに曲を書いてください!」とのことだった。驚いた。聞けば、3人とも筋金入りのサウナーで、日々修行(?)を積んでいるらしい。
わたしも3人には及ばないが、サウナに集うものの一人である。その魅力は、メリハリにあると思う。サウナ室と水風呂の温度差、密室での灼熱と静謐な外気浴。ここには緊張と弛緩、あるいは抑圧と解放の往復運動がある。今回の楽曲では、そのリズミカルな運動よろしく、リズム・モチーフに導かれ、エネルギーが増大し、頂点に達したところで発散されるというパターンが繰り返される。
「アウフグース/Aufguss」とは、サウナ室内で、立ち上った蒸気をタオルで撹拌させながらあおぎ、熱い風を送ることである。箏曲界に新風を巻き起こす彼らにぴったりではないか!
霧立つ雨のように空間を包み込む糸の音。透き通った一本の線に導かれ、立ち昇るメロディ。風にあおられて、草花は芽吹き、香りを漂わせる。箏が紡ぐその芳しい音色がこの世界に満ち満つことを願って−