ほのかに瞬く火花が、徐々に輝きを増し、さまざまな方向に弾け散る。
そのような曲を書きたいと思った。
木管楽器のトリル・トレモロによるほのかな光。徐々に立ち現れるビート、その波に乗る煌びやかな金管楽器。ビートの上で踊り狂う木管群。
火玉が最大限に膨らみ破裂したのち、フルート2本による独奏的な楽句が現れる。
その後曲は静けさを取り戻し、静謐ながらも鮮やかな回想と金管コラールを経て閉じられる。
この作品を初演したコゾリテの代表、横山裕一氏と作品を書く前にお話をした際、「ベツレヘムの星」というモチーフが浮かんでいるとおっしゃっていた。
東方の博士たちが星に導かれて幼子イエスを拝みに訪れたエピソードは、マタイによる福音書に収録されている。
彼らは王の言うことを聞いて出かけると、見よ、彼らが東方で見た星が、彼らより先に進んで、幼な子のいる所まで行き、その上にとどまった。彼らはその星を見て、非常な喜びにあふれた。
(マタイの福音書2章9-10節)
この曲を書き始めた当初、この「ベツレヘムの星」が今回の曲と一体どのように結びつくのかと思案したものだが思わぬ形でその連想は進んでいった。
新約聖書には他にも星のイメージが登場する。「ヨハネの黙示録」ではイエス・キリストの初臨を「輝く明けの明星」と表現している。
「わたしイエスは、使をつかわして、諸教会のために、これらのことをあなたがたにあかしした。わたしは、ダビデの若枝また子孫であり、輝く明けの明星である」。
(黙示録22章16節)
「明けの明星」という名は、金星が夜明け前に一際明るく輝くことから来ている。
イエス・キリストにより到来した神の国は「すでに」始まっているが、「いまだ」完成していない。世界には傷や悲しみがある。その緊張状態が、そして星のイメージが、不思議と明滅する線香花火と美しく私の中で重ね合わさった。
暗い世の中でも微かな灯火を見る。その先に希望を透かして見る。
細く、儚く、煌く光を見つめながらそんなことを思い巡らせていた。
委嘱:茨木キリスト福音教会
初演:吹奏楽団コゾリ
再演:東京佼成ウインドオーケストラ 第158回定期演奏会