TOKYO REQUIEM

for Orchestra

【編成】

2-2-2-2,4-2-3-1,1timp, 3percs, 1pf, 1hp, STRINGS

【解説】

本作では滅んだ世界の「レクイエム」という架空の設定を与えることにより、 オーケストラを時空間的に解体することを試みた。 そのような発想を原点とし、合唱不在のオーケストラの過剰な分割、「レクイエム」の音楽的素材の異化、 また西洋伝統音楽の文脈から遠距離にある音楽的素材を高密度かつ過剰に貼付することによって、 各奏者の身体性・オーケストラの伝統的社会性の解体、また「レクイエム」の歴史的文脈からの剥奪が行われる。 その結果、音楽はミクロかつマクロに二重の周期性を持って衝突し、自己解体/変容を余儀なくされ断絶し続ける。 なお、タイトルには人間の営みの痕跡としての都市、そして現在における「世界の傷」を象徴するものとして「TOKYO」を冠した曲の構成は以下の通りである。

Section1[Mozart@Sky burial]
モーツァルト、鳥葬。 人の消えた典礼音楽は鳥たちに啄まれ、引き裂かれ、風化し土に還る。 モーツァルトのレクイエムはズタズタに解体され、文脈から剥奪されてゆく。

Transition-Alart 文脈の破綻と自家撞着を繰り返した音楽は、飽和し、「災害・避難情報」アラートに導かれ崩れてゆく。 その上でSection1の素材をノイズ化したものが貼り付けられ、複層的なレイヤーを構成する。

Section2[Verdi@Melting down]
ヴェルディ、融解。 対象をなくし、形骸化した「怒りの日」は溶けてゆく。 やがて、和音の骨組みのみが残り、その残骸は散り、大気に舞う。

Section3[Faure@In Lost Paradisum] 楽園にて。
切れ切れな記憶。 楽園の安息は終着駅ではない。

Section4[XXX@The Feast]
楽園に暴力的に侵入する祝祭。 これまで提示されたあらゆる素材が並列され、多層的なクライマックスを形成する。

【受賞】

第89回日本音楽コンクール作曲部門(オーケストラ)第2位

 

【録音初演】

冷水乃栄流:TOKYO REQUIEM for Orchestra (13分42秒)

(管弦楽)東京フィルハーモニー交響楽団、(指揮)三ツ橋敬子

~2020年11月10日 NHK・CR505スタジオ~